やがて春が来るまでの、僕らの話。
「初詣行くならもっと早く知らせてよ、準備とかあるんだからね」
「いいじゃん別に、何したって大して変わんねって」
「なにそれ、どういう意味!」
「なにもしなくても可愛いって意味かもよ?」
「絶対違うし」
「うん、まぁ、違うね」
「……むかつく!」
くだらない言い合いをした後に気づいたのは、家を訪ねてきたのは柏木くん一人だけということ。
「みんなは?」
若瀬くんや陽菜も一緒だと思ってたんだけど。
「あー、ほんとは志月くんと俺とお前で行くはずだったんだけどさ」
「うん?」
「律くんは温泉だし、陽菜は毎年ばーちゃんちだしで、毎年俺と志月くん二人で行ってたの」
「そうなんだ。それで、若瀬くんは?」
見渡す限りどこにもいない。
遅れてくるのかな?
「それが急に体調悪くて行けないってさっき連絡がきまして」
「え、大丈夫なの?」
「食べすぎじゃない?この時期よくあることでしょ」
「そっか」
「てなわけで、行くよ」
柏木くんが、一人スタスタ歩きだす。
ポケットに手を突っ込んで、ダウンジャケットに首を縮めて、足元は雪で軋む音を響かせて。
スタスタ歩く柏木くんに、私も焦ってついて行く。