やがて春が来るまでの、僕らの話。
「神社ってどこ?」
「こっから徒歩五分」
「え、そんなに近いの?」
全然知らなかった。
この町のこと、まだまだ知らないことばかりだな。
「迷子になんなよ」
「なんないし」
「こんな暗い中迷子になられたら、さすがの俺でも動揺しちゃうよ?」
「だからならないって」
「陽菜だったら手繋げるけど、そんなわけにいかないしさ」
「……」
なんでだろう……
今一瞬、胸が痛かった気がする。
「…ならないもん、迷子なんて」
なんでだろう。
もし迷子になったら、柏木くんはどうするだろうって。
必死に捜して、陽菜じゃなくて私の手を繋いでくれるのかなって。
どうしてそんなことを考えてしまうんだろう。
「陽菜、いつ戻ってくるの?」
「んー、年明けてちょっとしたらかな」
「家族でおばあちゃんの家行ってるんでしょ?」
「いや、陽菜だけ」
「え、親は?」
「……」
「…?」
なにか変な質問だったのか、柏木くんはなにも答えてくれなかった。
別に普通の質問、だったよね?