やがて春が来るまでの、僕らの話。



苦しそうに乱れた息遣いで、柏木くんは手首を握ったままそう言った。

その額には、真冬なのにうっすら汗が滲んでいる。


……柏木くん、どれだけ捜し回ってくれたんだろう。



「ほんと、…悪かった。殺してやりたいとか、死ねばいいとか、本気で思ってるわけじゃなくて、」





月が綺麗な夜だった。

真っ白な景色に月影が映し出されて、私が見たことのない、とても綺麗な夜だった。


いつの間にか年は明けている。

今年最初に言葉を交わした相手は、柏木くんだ……



「……あのね」



明けましておめでとうの言葉じゃなくて、もっと聞いてほしい話があった。

一人では受け止められないくらい、苦しい話。


どうしてかな。

柏木くんに話したいと思えたのは。


どうしてかな。

柏木くんに聞いてほしいと思ったのは……

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