やがて春が来るまでの、僕らの話。
【ハナエside】
走った。
とにかく走った。
さっき食べたお寿司が逆流しそうなくらいに、必死に走った。
頭の中に渦が巻く。
ドロドロした黒い闇が、後ろから迫ってくるみたい。
その闇に追いつかれないよう、必死に逃げた。
逃げても逃げても追いかけてくる。
柏木くんが言った「殺してやりたい」「死ねばいい」が、追いかけてくる。
どこかの誰かがきっと私に向けているであろう、その憎しみ。
それが怖い……
ガシッ、
「、」
突然、誰かに腕を掴まれた。
前へ行こうとしていた体は、一瞬の衝撃を受けて立ち止まる。
「……柏木くん」
私の手首を掴んでいるのは、私と同じように息が切れている柏木くんだ。
ハァハァと苦しそうに、肩で息をしている。
「、…ごめん、悪かった、」