やがて春が来るまでの、僕らの話。



あの日……陽菜が自殺した、高1の冬。

誰にも言っていない事実がある。



あの日の夜、本当は陽菜から電話があった。

多分俺にだけ、陽菜は助けを求めてきてた。

なのに俺は、その日に限って着信に気づかなくて……

気づいたのは、電話がきてから1時間も後のことだった。


あのとき、暗闇の中、一定の速度で点滅するランプの色を今でもハッキリと覚えている。

手に取ったスマホのディスプレイが、暗闇の中で眩しくて。

眉を寄せるように見た画面には、不在着信1件の文字。

切り替えた着信履歴の欄に『陽菜』の名前が表示されてるのを見た瞬間、嫌な予感が確かにしたんだ。


だってあの日、学校で陽菜はハナエとケンカして、取り乱して保健室行って、薬を飲んで病院行って……


確かにあの日、あいつはずっと不安定だったから……



焦って、


本気で焦って、


電話をかけながら家を飛び出した。



だけどスマホのコール音が陽菜の声に変わることはなくて……


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