やがて春が来るまでの、僕らの話。
「それで、その後……泥酔状態のお父さんの車が事故を起こして……一人の人が犠牲になった」
「……」
「私たちがお父さんから逃げようとしたせいで、…そのせいで……関係ない人が死んでしまったの…」
私なんかのせいで……
「怖くても……殴られても蹴られても、あの時お父さんのことを止めていれば…」
きっと私は恨まれている。
なんで止めなかったんだって。
赤の他人を巻き込んで、自分だけ助かりやがって、って。
被害者の周りの人たちは、きっと私を恨んでいる……
「私なんか死ねばいいって……きっとどこかで思っている人がいる」
ポタポタと大粒の涙が零れた。
頬を伝ってポタポタと、次から次に涙が落ちる。
生きる資格のない私に、生きていることを証明させるように、涙が全然止まらない……
「………」
柏木くんはなにも言わなかった。
こんな話、聞きたくなかったかもしれない。
言わなきゃよかったかな。
でも本当は、誰かに聞いてほしくて……
柏木くんに、聞いてほしくて……
「ハナエ」
未だ手首を掴む柏木くんが、少しだけ私を引き寄せて……
ふわっと優しい温もりを感じたのは、腕の中に包まれたから。
決して強くはない両腕は、温かさで溢れていた……