やがて春が来るまでの、僕らの話。
「でもさぁ、高校のとき。ハナエの傍に志月くんがいてくれて、ほんと良かったと思うよ」
ビールに飽きたのか梅酒を頼んだむっちが、メニューを閉じながらそんなことを話しだした。
「私は同じグループにいたわけじゃないけど、だからこその視点というか。客観的に見てた限り、あの頃のハナエに必要だったのは、カッシーでも陽菜でも倉田先輩でもなくて、絶対に志月くんだったと思うんだ」
「………」
「だってすごく不安だったと思うよ、あんな時期に転校してきて、変な噂が広まって。そんな中でいつも傍にいてくれる人の存在って、絶対に誰より大きいと思うし」
むっちの声に、あの頃の記憶たちが蘇ってくる。
「それにほら、ムカデ女から守った志月くん、スーパーかっこよかったし!」
身勝手に、自分勝手に恋をしていた、高校一年生の俺。
片思いみたいな彼氏だったけど。
それでも、俺がいたことに意味があるのなら……
「やべ、なんか泣きそー」
俺はやっぱりこの恋を、キレイに終わらせそうだよ。