やがて春が来るまでの、僕らの話。






「泣きやんだ?」

「うん、…」


気持ちが少し落ち着いた頃、私は自分から体を離した。


手袋を脱いで涙を拭っていると、そこに柏木くんの手が伸びてきて……

掴まれた右手が、そのままぎゅっと繋がれた。



「帰ろう」



繋がれた手を引くように、柏木くんは前を向いて歩き出す。

温かい手から伝わる安心感は、今まで感じたことのないほど私の胸を熱くした。


繋がる手と手が温かい。

どうしようもなく温かい。

引かれる手を静かに握り返してみたら、少し前を歩く柏木くんも同じように握り返してくれた。


この手をずっと繋いでいたい。


ずっとずっと繋いでいられたら、私はきっと、光の先に歩いていける。


子供ながらに、そんなことを思ったこの夜。




十五歳、冬。


高校一年生の男の子が言う「守ってやるよ」は、


とても強くて、優しかった……



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