やがて春が来るまでの、僕らの話。



数日後、「雪だるま作ろー!」という陽菜の誘いで、私たちは柏木くんの家の庭に集まった。


「寒ぃ…」


ブツブツ文句を言う柏木くんは、猫のように背中を丸めて動かない。


そういえば結局、この町で起きた事件の話し、聞いてないな。

でもあんな風に言われてしまった以上、聞く勇気はもうなくなっている。



「そうだ、お土産の温泉まんじゅう買ってきたよ」

「え、温泉まんじゅうって定番すぎない?」

「定番バカにすんなよ、定番ほど美味いもんはない!」


庭先で楽しそうに話す若瀬くんたちを、一人ぼんやり眺めていると。


「ハナエ、元気ない?」

「えっ」


陽菜が顔を覗き込んできて、びっくりするのと同時に胸が痛んだ。


「げ、元気だよ」

「ほんと?」

「うん」


本当は考えていた。

男の人と付き合ったことなんてないからわからないけど、この間の私と柏木くんがしたこと。

抱きしめられて、手を繋いで帰ったこと。

あれって多分、しちゃいけないことだから。


……どうしよう。

きっと陽菜を傷つけることをしてしまった。

そんなこと、本当はしたくないのに。



でも私、どうしよう。


私、柏木くんのこと、


「やる気あんの?」

「!」

< 53 / 566 >

この作品をシェア

pagetop