超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
「店に通って雪乃に会ってたのに気づかなかったの?そんなこと知らずにブログで雪乃を思わせるようなことを載せて、そのせいで雪乃は女子の集団に呼び出されて囲まれて大変だったんだから」
「…………」
「まぁ初主演映画が決まってうれしかったんだろうけど。でも自分のことばっかりで、雪乃が困ってることに気づけないような人には渡せない」
「…………」
「元々渡すつもりなんてなかったけどね。けど、今回の件で藍原くんにはぜったいに渡さないって思ったよ」
凌馬くんは俯いて顔が見えない。
本人に直接言うつもりはなかったけど、颯くんがここまでわたしのことで怒って感情を表に出すことが、不謹慎だけどうれしく思った。
「……いまの話は本当?」
「うん……」
「困ってた?」
「学校に行くだけで周りからコソコソ話されたり目で追われたりして、しんどかったけどもう大丈夫だよ」
「それは……」
「颯くんが言ってないのに、わたしが困ってることに気づいて助けに来てくれたの」
颯くんの服をぎゅっと握ってから、凌馬くんを見る。
凌馬くんの瞳はいつもより潤んで揺れていた。