超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。




「ねぇ、ゆきちゃん」

「はい」

「やっぱりさ……おれと付き合ってよ」


耳元で囁かれて心臓が爆発するかと思った。

息がかかって、より甘い響きに感じた。


思わず体を離して耳をおさえる。



「も、もうからかうのはやめてくださいっ!」



いまのはずるすぎる。

ドキドキがおさまらない。


空野さんはアイドル。
いままで以上にその言葉は冗談めいて聞こえる。




「……ばか」

「え?」

「ゆきちゃんのばか!今日はたくさん癒してもらうから!!」



さっきよりも抱き締める力が強くなる。

少しくるしいと思ったけど、それは抱き締められる強さからなのか別のものなのか。


わたしにはやっぱりわからない。

だけど、空野さんに抱き締められてうれしさと愛しさでいっぱいになっている。


そういえばちゃんと会うのは久しぶりだ。

連絡はとっていたけど、やっぱり直接会うのとは全然違う。


どれくらい抱き合っていたかわからない。

わたしの心臓が限界にきそうなときに、やっと離してくれた。


鼓動は速く刻んでこれ以上はきっと壊れてしまうのに、離れていく温もりに寂しさを感じた。




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