超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。



じっと見つめる視線はなんだか熱っぽい。



「ゆきちゃんてだれにでもこんな距離感なの?」

「え……?」

「キス、できそうだね」

「っ……!?」

「……する?」

「か、からかわないでください……っ」



手を離して空いた両手で空野さんの肩を押す。
だけどビクともしない。

距離は変わらない。


目を逸らすことができない。




「ねぇ、ゆきちゃん」

「…………」

「焦るよ……同じクラスの黒瀬くんがうらやましい……」

「空野さん?」



だんだんと声が小さくなっていく。
そのまま倒れこむようにわたしの肩に頭を乗せた。

疲れているのかな?


空野さんの背中に手を回してポンポンとする。



「ハグしたら1日のストレスの3分の1が解消されるらしいですよ」

「おれはいま全部解消されてるよ。癒される……」



空野さんもわたしの背中に両手を回してぎゅっと抱き締めてくれる。

わたしが抱き締めていたはずなのに、すっぽり収まってしまった。


華奢そうに見えてけっこうしっかりしている。
やっぱり男の人なんだ、と改めて実感する。




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