世界でただ一人のヒーラーは生殺与奪を握ってます。
クロエの瞳にジルの肉片が飛び散るのが映った。ジルの肩口から腕がもげる。もげた腕はバアルの持つ棍棒に肉片としてこびりついている。盾を構えながらカイはその光景を目の前で見て、驚愕の顔をして、盾を持つ腕に力が入る。そして誰もが思った。ジルの死を。
「まだです、ヒール」
アリシアは冷静な表情を浮かべてジルに治癒魔法をかける。
カイの時と同じようにジルも淡い光に包まれた。
バアルの棍棒についていたジルの肉片は結晶のようになり最後は粉々になり空中で消えた。
クロエは一部始終を見届けていた。ジルの肩口はまるで何もなかったように肌を晒している。もげたはずの腕もついている。爪痕として残ったのは破れ砕けた肩当てと服。奇跡だと思った。光属性の治癒魔法がこれほどのもだという事に驚いた。クロエはアリシアに視線を向けた。
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