溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
「あの、なにからなにまですみません。本当にどうお礼を言っていいやら」

梨乃はシートベルトを着けながら礼を口にするが、相変わらず目の前のふたりは話を弾ませている。
梨乃の存在など忘れているようだ。

「男ってどうして車が好きなんだろう」

けれど、普段勉強ばかりで受験一色の翔矢の明るい笑顔を見るのは久しぶりだ。
たまにはこうして気分転換も必要かもしれない。
侑斗も翔矢と同じように弾んだ声をあげている。
高校生と変わらぬその笑顔を見ながら、侑斗は意外にとっつきやすいひとのようだと、梨乃は感じていた。

「ま、いっか」

未だにこの予想外の展開にはついていけないが、車の内装について熱く語り合う侑斗と翔矢を見ながら、梨乃も口元を緩ませた。

侑斗が運転する車が梨乃と翔矢が暮らすマンションに着いたとき、マンションの前には人だかりができていた。
よく見ればマンションの周囲には規制線が張られ、警察官が辺りを整理している。

「え、なにがあったの。パトカーまでいるし、なんで?」

車内からその様子を見ていた梨乃は、シートベルトを外すと慌てて車から飛び降りた。

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