溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

洗濯物を干し終え、梨乃はひと息ついた。
マンションのベランダから緑豊かな公園を見下ろし、早朝から動き続けていた体をほんの一瞬休める。
9月半ばとはいえ、まだまだ残暑は厳しい。
朝日が肩より少し長めの黒髪をキラキラ照らしている。

「いい天気。今日もよく乾きそう」

眩しげに細めた大きな目、色白の肌は陽射しを受けてほんのり赤い。
細身で小顔のせいか身長158センチしかないにも関わらずスラリとスタイルよく見える。
朝食とふたり分の弁当を用意しながら洗濯機を回し、合間に着替えと必要最低限のメイクを手早く済ませる。
それがここ2年続いている平日の朝のルーティンだ。

「あ、そろそろ翔矢を起こす時間だ」

梨乃は部屋に戻り弟の翔矢の部屋を勢いよくノックした。

「翔矢、起きてる?」

梨乃がドアを開けると、すでに翔矢は起きていて着がえの最中だった。
手足が長くスラリとした翔矢はいつの間にか梨乃よりも背が高くなり、高校三年生になった今では180センチを超えている。
バスケ部で鍛えた体と表情豊かで端整な見た目が相まって女の子からの人気も高い。
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