溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
今年28歳の梨乃から見ても、将来ますます素敵な男性になるだろうと弟ながら期待している。

「おはよう。夕べも遅くまで勉強してたみたいだけど、寝起きは抜群だね」
「それは姉さんもだろ。 仕事で遅いし、疲れてるなら弁当は作らなくていいよ」

 翔矢は梨乃に申し訳なさそうな視線を向け、部屋を出る。

「仕事で遅いのはもう慣れたよ。それに自分のお弁当を作るついでだから大したことない」

翔矢を追いながら、梨乃は苦笑する。
実際のところ、食べ盛りの高校生のボリュームたっぷりのお弁当を作るついでに自分の小さなお弁当を用意していると言ったほうが正確なのだ。
今朝も鶏のから揚げをいくつ揚げたことか……。
梨乃は苦笑しながらも楽しそうに朝食の準備を進めた。
朝からどれだけ食べても午前中にはお腹がすくという翔矢のために山盛りのご飯を茶碗によそい、大皿にたっぷりの生姜焼き、そして具沢山の味噌汁を並べる。

「朝から生姜焼きをがっつり食べる男子高校生。お昼もから揚げゴロゴロ弁当。もりもり食べて健康的……それはいいんだけど」
 
梨乃は翔矢のために用意した朝食を見ながらこっそりため息をついた。
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