溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~


翌日、梨乃は侑斗とともに彩実に紹介されたチョコレート専門店を訪ねた。
そこは最近オープンしたベルギー産チョコレートの専門店で、本国では国民の誰もが知る有名店らしい。

「たくさんチョコレートを買ってもらって、ありがとうございます」
「思った以上に種類があったな」
「そうですね。参考になるスイーツもあったのでクリスマス企画も頑張ります」

興奮気味に話す梨乃の横で、侑斗もつられて笑みを浮かべた。
ふたりは店を出た後ぶらぶらと大通りを歩いているのだが、梨乃の足取りは軽やかで楽しげだ。
侑斗はたくさんのチョコレートが入った、品のいいショップバッグを手にしていた。
店のショーケースには30種類ほどのチョコレートが並んでいて、小粒のそれはすべてが美しかった。
どれを買おうかケースの前で悩む梨乃を見かねた侑斗は、せっかく来たのだからと言って全種類のチョコレートを彩実へのお礼も含め2個ずつ買ったのだ。
侑斗にしてみれば大した出費ではないのだろうが梨乃にとってはひと月分の食費以上の金額で、その思い切った買い方に驚かされた。
その反面、二度とこんなうれしい機会はないだろうと、梨乃は侑斗への申し訳なさ以上の喜びに舞い上がっていた。

「ホットチョコレートもおいしかったですね」

侑斗とつないだ手を軽く振りながら、梨乃はしみじみとつぶやいた。
2階がカフェになっていて、梨乃はお店の1番人気だというホットチョコレートを注文し、そのおいしさに言葉を失った。

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