溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~


その後、梨乃は同じマンションの住人たちの輪の中にいる翔矢を見つけ、この騒ぎの詳細を聞いた。
梨乃たちが住むマンションは全15戸の5階建て。
強盗が入ったのは3階の南奥の家だった。
その部屋には70歳の女性がひとりで暮らしているのだが、たまたま今日は他県で暮らす息子が来ていて犯人を捕まえたらしい。
梨乃たちの家はその被害者宅の2軒隣りだ。
自分たちの部屋に押し入られた可能性もある。
それを聞いたとき、梨乃は軽い目眩を覚え、傍らにいた侑斗に再び支えられた。
今日は何度も侑斗の腕に抱き寄せられ、そのたびドキドキと鼓動は跳ねているが、さすがにそのときは侑斗への緊張というよりも、下手をすると自分は襲われていたのかもしれないという不安で、心臓の音がかなり大きく聞こえた。
鑑識活動が終わり警察からの質問にいくつか答えた後家に戻ったのだが、その間も侑斗は梨乃のそばで彼女を見守っていた。
これ以上侑斗に迷惑はかけられない。
そう思った梨乃は丁寧に礼を述べ、大丈夫だと伝えた。
けれど、まだ顔色が悪い彼女を心配して予備校を休むと言い出した翔矢と、その必要はないと言う梨乃が口論を始めたのを見て、侑斗は苦笑混じりに口を開いた。

「もうしばらく俺がここに残るから、受験生はさっさと予備校に行け」

その言葉に梨乃は絶句し、翔矢は「なるほど」と言ってさっさと予備校へと向かった。

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