溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
「悪い。大丈夫か?」

ぶつかった反動で倒れそうになった梨乃の体を、とっさに伸びてきた腕がぐっと引き寄せ支えた。
そのまま抱き込まれ、気づけば誰かの胸の中だ。

「痛む場所はないか?」
「え……」
 
聞き慣れない声に顔を上げると、端整な顔が目の前にあった。

「ゆ、侑斗さん」

心配げな表情で梨乃の顔を覗き込んでいるのは、経営企画部の白石侑斗だった。
白石ホテル社長、白石諒太のいとこであり、今年三十二歳になる、白石ホテル創業家一族のひとり。
諒太とともにこれからの白石ホテルを支えるツートップのひとりとして有名だ。
梨乃を余裕で見下ろすほどの長身。
180センチ以上あるはずだ。
白石家の生まれということだけでなく、誰もが美形と認める顔も周囲から注目を浴び、切れ長で意志の強そうな瞳とほどよい厚みの唇。
慌てているせいか、少し長めの髪がくずれて目にかかっているのも印象的で、初めて間近で見る侑斗の顔に、梨乃は言葉を失った。

「大丈夫か?」
「あ、はい、大丈夫です。すみません。侑斗さんこそケガとか、大丈夫ですか?」

ぼんやりと侑斗を見つめていた梨乃は、ハッとしたように侑斗から離れた。
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