ONLY YOU~過ちの授かり婚~
「会わない人種なら、私の話訊いてくれますか?」

「何?」

彼は私に顔を近づけて来た。
麝香と煙草の混じった香りが彼のカラダから匂う。

「私…さっき婚約していた彼氏に別れを告げられたんです」

素顔も分からない。
素性も定かじゃない。

偶然、私の隣に座っただけの彼。
その彼に切ない胸の内を吐露した。

「それは可哀想に。
君は俺に慰めて貰いたいの?」

「別に…誰かに訊いて貰いたかっただけです」

彼が飲んでいるのはジントニック。

「君は無垢な女だ。
もしかして…その彼は初めての人?」

サングラス越しに見える彼の切れ長の瞳は好奇心で満ちていた。

私は思わず気恥ずかしくなり、俯いた。

「婚約解消されたってコトはその薬指のエンゲージリングは無意味なモノだな」

彼のしなやかな大きな手が、私の手をすくうように掴み上げた。

突然のコトで私は目を円くして、彼を見つめる。

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