ONLY YOU~過ちの授かり婚~


柊さんは俺を波止場の倉庫へと連れて来た。

倉庫には黒の目出し帽で顔を隠した男が数人、俺達を到着を待っていた。
柊さんは俺の背中に回り込んで、いきなり両手を手錠で拘束し、膝を折らせる。


「手荒な真似はしたくないんです…伊集院頭取」

「そう言ってる割には手荒だな・・・柊さん」

「俺は貴方と取引がしたいだけだ・・・こちらに『黒の日記帳』を渡すんです。伊集院頭取」

 柊さん達も『黒の日記帳』の存在を把握していた。

「…周防社長にも総理にも渡すつもりはない…あれは俺の御守りだ…」

あれは母の残した御守り。俺が伊集院鑑造の息子である証。
「俺の父や当時の政治家たちの悪事の数々が記されているが、宿に軟禁状態にされた母の苦悩の胸中も記されている・・・今の俺はあの日記を公にする意思はない・・・だから、公にしたくなければ、俺を助けろっ」

「…」

「大体、俺は総理の養子だぞ。敦司さんはこんなコトしろと命令したのか?柊さん」

「するワケないでしょ?俺の独断ですよ…」




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