ONLY YOU~過ちの授かり婚~
「でも・・・」

私は言葉尻を濁しているとトリュフのピザが運ばれて来た。

「君は憶えていないのか?」

不意に掛けられた質問に小首を傾げた。

「何をですか?」
私は思わず訊き返す。

「憶えていないならいい…」

頭取はその質問に対し、あえて返答は求めず、そのまま曖昧にして、グラスのワインを少し揺らしながら飲み干した。

「あれから色々と君のコトについて調べたんだ。融資をする際に大切なコトだからね」

「そうですか…私も少し調べました」

「俺のコトを?」

「はい」

「俺の人生なんて流転の人生だ。
同情ぐらいはした?」

「頭取?」

今まで、自信に満ちていた彼の顔に暗い影が落ちた。
「今回は融資したけど…次はどうなるか分からないよ」

実破に分類された父の会社は相当ヤバいんだと感じた。
頭取に無理なコトをさせてしまったんだ…



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