ONLY YOU~過ちの授かり婚~
私は病院を後にして、汐留の『共栄薬品』本社を訊ねた。

最上階の幹部フロアに旧『宝和薬品』の幹部クラスが入る予定で、急ピッチで内装工事が行われていた。

「失礼します」

「蓮見さんか…まぁ、座れよ」

各務社長は私に向かって笑みを浮かべ、ソファに座るよう促した。

彼の危険が香るフェロモンはどうも合わず、苦手。

私がソファに腰を下ろすと彼が内線電話の受話器を手にした。

「蓮見さん、コーヒーでいいか?」

「あ、はい…ありがとうございます」

彼は秘書室に内線を掛けて、愛奈さんを呼び出した。

初めて料亭で顔を合わせた時は、強引で傲慢な印象しかなく、いけ好かない男性だと思ったいたけど、合併の話が進むにつれ、彼の態度も変わっていった。

「社長、お呼びでしょうか?」

「客人だ。愛奈。コーヒーを頼む」

「貴方は・・・」

「早く淹れろっ」

愛奈さんはあからさまに嫌な顔をしたが、給湯室に消えた。



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