悔しい心音に望む



恋愛は、尽くす方、尽くされる方。
それだけで成り立ってる例が世に溢れて。


蔓延してる病の原因は恋情で。


簡単に罹ってしまったから抜け出せない、この迷路みたいな鬱陶しい固執とか生温い幸福感とか。
満たされちゃって、もう。




「本気じゃなかったら、追いかけないよ」




もう。
届いてくれよ。


流し、流し続けた涙に、似た起伏。わかりやすいようにわざと小瓶に落として、甘いピンクのリボンを可愛く飾ってあげたから。


届いてくれよ。
本気だよ。


ってきみに言ったら、途端に距離を取るのは、きみの方だったよぜんぶ。


本気じゃなかったら。


追いかけないよ。


尽くさないよ。


きみの理想目指して自分を愛したりしないよ。


本気じゃなかったら、 “ 恋 ” なんて甘ったるい猛毒のことば、音になんかしなかった。




「しかたないでしょ、」




だから、しかたないで続く言葉に頼る私を。


……濡れる前の視線を上げて。


クソ真面目なきみの、指先を許して。




「恋だから?」




頷く代わりにちいさくわらって、近づく瞳を隔てる眼鏡を取って。




「恋だから」




言葉に困るくらいの柔い温度が触れ合うまで、目を閉じるのが勿体なかった。


ファーストキスって、多幸感。







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