貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「この後すぐに納棺の儀があり、一週間後には新皇帝の即位式がある。われわれはしばらくの間忙しくなるが、紅華殿が参加されるものはないのでごゆるりと過ごされるがよい。後宮の準備は二日もあれば整うので、申し訳ないがそれまでは宮城の一室にとどまっていただく」

「……かしこまりました」

 深く頭を下げたのは、ただ礼をとっただけではない。

 その時、背後の扉が開き誰かが入ってきた。なにげなく振り向いた紅華は、そこにいた人物を見て動きを止める。


「晴明皇子」

 立ち上がった宰相の言葉と葬送のための真っ白い喪服で、その人物が誰かはすぐに分かった。

 背が高かった。線の細い顔立ちは涼やかで、紅華の思っていたような傲岸不遜な皇帝の印象とあまりにもかけ離れている。どこか飄々とした雰囲気のその青年は、ゆっくりとこちらへと歩いてきた。

 紅華はあわててその青年の方をきちんと向くと、腕を組んで膝をついた。
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