貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 どちらにしろ、言葉こそ頼みの形をとっているが、もとより紅華に断るという選択肢は用意されていない。けれど、そんな自分を気遣ってくれる晴明の態度に、紅華は好感を持った。

「ふつつかものですが、なにとぞよろしくお願いいたします」

 破談にすることは、どうやらもう本当に無理らしい。それならば、この人のことも前向きに考えてみよう。そう思った紅華は、本心から深く頭を下げた。

「睡蓮」

 宰相が誰かを呼んで、紅華は再び顔をあげた。はい、と澄んだ声がして、一人の女性が入ってきた。

「これなるは、沙睡蓮。後宮の女官長である。以後、紅華殿に付き従うので、なんなりとお申し付けあれ」

「はい」

 睡蓮は、うつむいたまましずしずと部屋に入ってくる。顔はよく見えないが、立ち居振る舞いは上品で洗練された仕草を感じる。

(あら?)

 晴明の横を通る時も睡蓮は彼に向けて顔をあげることはしなかった。晴明の方も、視線すら彼女に向けない。

(身分の低い方なのかしら)
< 26 / 237 >

この作品をシェア

pagetop