貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 宰相を振り向いた晴明は、少しの間なにか考えているようだったが、再び紅華の方を向くと優雅に目を瞬かせた。
 
「ああ、そうだね。気が付かなくて悪かった」

「いえ……」

「私も宮城も、しばらくの間は落ち着かない日が続く。なかなか話をする時間もないかもしれないが……」

 晴明は言葉を切ると、その場に立ち上がった。

「あなたさえよければ、どうかこのままとどまって私の妃となってほしい」

 晴明の言葉に、想像していたような独裁者独特の押しつけがましさはない。むしろ、紅華同様戸惑っている様子が感じられた。

 そう気がつくと、今まではるか彼方の存在でしかなかった『皇帝陛下』というものが、急に身近に感じられる。

 いきなり父皇帝が亡くなって自分が皇帝の座につき、しかも初めてとなる妃が目の前にいる。理由は知らないが、二十四歳にもなって寵姫の一人もいないということは、なにかしら本人に思うところがあるのだろう。
 

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