貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 身分の低い者は、直接高位の者とやり取りすることはできない。彼女がただの下女ならわかるが、女官長という立場ならそれなりの家の出のはずだ。その態度になんとなく違和感を持つ紅華の前で、睡蓮は膝をついて挨拶をした。

「蔡貴妃様のお世話をさせていただきます、沙睡蓮です。これからよろしくお願いいたします」

 そう言って、睡蓮ははじめて顔をあげた。歳は、紅華より少しばかり上だろうか。大人びた美人だった。

「こちらこそ、お世話になりますね」

「どうぞ、こちらへ。お部屋にご案内いたします」

 立ち上がった睡蓮に促されて、紅華も立ち上がる。晴明が、微笑んで声をかけた。

「では、紅華殿。また」

「はい。御前、失礼いたします」

 紅華は、睡蓮に連れられて広間を後にした。


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