貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「姿が見えないと思ったら、ここにいたのか」

「未来の貴妃様にご挨拶を」

「すみません、紅華殿。……弟がご迷惑をおかけいたしました」

「いえ……」

 さっきうっかり暴れそうになった失態を思い出して、紅華は頬を赤らめる。それを天明はにやにやと見ていた。

「このお嬢さんは、なかなか味があっていいぞ、晴明」

「何をしたんだ、お前」

「俺は何もしていないが、貴妃殿が……」

「あの、それで、晴明陛下はなにか私にご用事でしたでしょうか?」

 あわてて天明の言葉を遮った紅華に問われて、晴明は我に返った。


「ああ、そうでしたが、さて……」 

 そう言うと、しばらく何やら思案していたが、やがて何かをあきらめたようにため息をついた。そして、持っていた手巾から小さな花を一輪取り出して紅華に渡す。

「これは……すみれ、ですか?」
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