仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 もし、紗枝さんにも「こういう趣味はちょっと」などという反応をされてしまったら、既に底辺に近いこの関係がさらに悪化してしまうかもしれない。

 よって、仕事としておいた方が無難だろうという判断から、あのときは心苦しく思いつつも嘘をついたというわけだった。

「社員を連れて行くわけじゃないから」

「むしろ社員を連れて行った方がいいんじゃ……?」

(これは遠回しに断られてるな)

 やはり仕事としておいたのは正しかったらしい。こっそり胸を撫で下ろす。

(思えばずっとそわそわしていたしな。きっと早く帰りたかったんだろう)

「次からはそうしてみるよ」

「えっ」

「ん?」

「あ、いえ、ううん、なんでも」

 紗枝さんがうろたえている。 作られた笑顔より、そちらの方がよほど人間味があった。
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