仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 これももちろんアンティークだった。名のある職人が手掛けたもので、界隈では非常に価値の高いものとされている。コレクターが目の色を変えて欲しがる代物であり、私もこれに座れたらうれしさで失神する自信があった。

『一度、仕事で実物を見たことがあるんです。さすがにこれは写真に収めておかなきゃと思いまして。でも、下手に写真を撮ったせいで、見るたびにうずうずするんですよね。あのとき座ってみるよう勧められたんですが、なんで遠慮したんだろう。もったいないことをしました……』

 写真とともに送られたメッセージ。あの椅子を生で見た羨ましさと、もったいない! というもどかしさとで、返信を打つ手に力がこもった。
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