仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
(俺はお前の方が羨ましいよ。会話しないわけじゃないのに、いつも空気が張り詰めていて。……いや、あれは会話なのかな。メールや電話と一緒で表面上のやり取りでしかないだろ)

 いまだに紗枝さんのことはなにもわからない。俺の前で、あの生き生きとした感情を見せないよう線を引いているということぐらいしか。

 この結婚は続けたい。あの日の彼女に恋をしたから。けれど、そのためになにをするべきか――。

「なあ。もし奥さんと喧嘩したら、お前は誰にどう相談する?」

 質問を投げかけ、きょとんとした渡辺の顔を覗き込む。これがなにかを掴むきっかけになればいいと思いながら。


***


 夕飯の支度をしていた私は、突然スマホが鳴り出したことに飛び上がった。この音は和孝さんから来るときに設定しているものだ。
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