仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
「紗枝さんに言われたんじゃなかったら、ここまでしてないよ」

(え……)

 バックミラー越しに和孝さんと目が合ってしまった。

 どくんと心臓が音を立てる。

(な、なんか今日、変じゃない? 私だけ?)

 和孝さんはいつも私を気遣って優しい言葉をかけてくれる。形だけでも妻だからだろうと思ってはいたけれど、さっきからどうもその言葉が響いた。

(夫婦っぽく振る舞ったり、触ってきたり……和孝さんはどういうつもりでしてるの)

 胸に手を当てて、気付かれないようゆっくりゆっくり深呼吸する。

 そんなに暑い日でもないのに、背中を汗が伝っていった。

(ちょっと落ち着こう。どきどきしすぎだから……)

 自分に言い聞かせた私の視界に、見慣れた花屋が映る。

「あ」

「ん?」
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