仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 車が止まると同時に外へ出て行こうとしたけれど。

「紗枝さん!」

 ぐ、と後ろから腕を引かれてひっくり返りそうになる。

 一気に縮み上がった心臓をそのままに振り返ると、和孝さんが私を見つめていた。

「言うかどうか迷ったけど言っておく。ちょっとだけ君の後輩に嫉妬した」

(は……)

「ごめん。それだけ。……残りの仕事も頑張れよ」

 いつ腕を離されたのか。そしていつ車を出たのか。

 自分でもわからないまま、ばたん、と目の前のドアが閉じて車が走り去っていく。

 その車体が見えなくなっても私はその場に立ち尽くしていた。

(どういうこと……?)

 和孝さんは嫉妬という言葉を使った。

 私の知っている言葉と同じものだとしか思えないけれど、そうなるとますます意味がわからない。
< 231 / 394 >

この作品をシェア

pagetop