仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 けれど、伸ばした腕が触れる前に思い切り肩を押された。

「しつこいな!」

 その勢いのまま、男性が私に向かって手を振り上げる。

 思わず目を閉じていた。訪れるであろう痛みに備えて自分を庇い、ぎゅっと唇を噛む。

 だけどいつまで経っても痛みはなかった。

 それどころか、私の背中を包み込むように後ろから抱き寄せられる。

(え――)

「――人の妻になにをしているんですか」

 どっと冷たい汗が背筋を伝う。

 ここにいるはずのない人の声だった。振り返らなくても、私はその声を毎日聞いている。

「な……」

 私に手を上げようとした男性が後ずさった。

 その人よりも――和孝さんの方が背が高い。

「私の妻になにをしようとしたんですか」

「あ……いや、その……」

(どうして……)
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