仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 負けじと私も大きな声を上げたことで、少し周囲が騒がしくなる。一連の騒動に気付いたようだった。

 男もそんな空気を感じたのか、忌々しげに舌打ちを漏らす。

「悪かったよ」

 素っ気ない謝罪を受けた男の子は、よくわからないといった表情でこくりと頷いた。

 それを見た男がまた舌打ちをして私を睨みつける。

「関係ねえくせにしゃしゃり出てくるなよ、クソ」

 捨て台詞だけを残し、さっさとその場を立ち去ってしまう。

(タンスに小指をぶつければいいのに)

 そう心の中で念じながらもほっとしていると、ひとりの女性が駆け寄ってきた。

「ゆいくん! またひとりで勝手に歩き回って……!」

(あ、この人がお母さんかな)

 きれいな女性だった。
< 30 / 394 >

この作品をシェア

pagetop