仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 にこにこしながら明るく返事をした及川さんは期待のホープである。前職はブラック企業だったとかで、ずっと憧れていたウエディング業界に来たという。

 ほんわかした雰囲気と表情の女性だったこともあり、最初は誰もが心配していた。だけど仕事になるとてきぱき機敏に動き、新規のお客様と次々に契約をまとめる敏腕社員だったのだ。

「私、別に及川さんの補佐をやらなくてもいいと思うんだけどなぁ」

「そんなことないですよ。先輩のおかげでいつも助かってます!」

「むう……」

(私が新人の頃は、こんなにいくつもスケジュールを同時進行させられなかったのにな)

 地味に敗北感を覚えていると、突然スマホが鳴った。

「ごめん、及川さん。ちょっと出てくる」

「はい。……私のことはお構いなく」

(……?)
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