仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 こんなところで転ぶなんて、と舌打ちしたい気持ちで覚悟する。

 なのに、床に転がる衝撃どころか、なにか柔らかくて温かいものに包まれた。

「大丈夫ですか?」

(……う、わ……)

 転びそうになった私を抱きとめてくれたのは、十人が十人とも振り返りそうな目鼻立ちの整った男性だった。

 まず、爽やかそうな人だと思った。目尻が下がっているせいか温和な印象を受ける。

 すらりとした高身長に上質なスーツがよく似合っていた。私を心配そうに覗き込む瞳には嘘も下心もなくて、ただただ純粋に胸が騒ぐ。

「ご――ごめんなさい。すみません」

 完全に思考停止してしまっていた。

(真里、私……まだ枯れてなかったみたい……)
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