仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
「あ、うん」
いつもなら和孝さんは私が食べ終わるまで付き合ってくれる。今日、そうしないのはこのあとにお楽しみが待っていることをわかっているからに違いない。
食器を持って席を立ち、まっすぐキッチンへ向かう後ろ姿を直視できない。
(嗅ぐって、つまり……嗅ぐんだよね)
私のこの動揺をそのまま声に出していたら、いったいなにを言っているんだと笑われただろう。
ドキドキと心臓がうるさく高鳴っていて、先ほどまでは順調だった食事の手が止まる。
和孝さんは食器に水をかけたあと、私を振り返らずに浴室へと向かっていった。
(新婚夫婦って難しい)
冷たいとさえ言えた夫婦関係が劇的に改善された今も、私はまだ新婚夫婦とはなにかという点について悩んでいた。