仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 床にも階段にもカーペットが敷かれている。ローラーの付いた靴でも履いていない限り、そう滑ることはないだろう。

 それなのに彼はそんなことを言った。

(フォローされてる……)

 私が転んだのは、履き慣れていないヒールと、意識が別のところに向いていたせいだ。自分でもわかっているからこそ、彼のひと言が沁みた。

(いきなり変な女が倒れ込んできたんだから、怒ったっていいのに)

 顔は考えるまでもなく完璧だ。さりげない対応を見る限り、性格まで完璧なのかもしれない。

 ますます胸が騒いでしまうのを必死に隠しながら、もうひとつ犯していた自分の失態を思い出す。

(さっきの騒ぎを見られていなかったらいいんだけど)
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