仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 見知らぬ人と揉めている姿なんて見られていたくはなかった。私が出会ったばかりのこの人に好意を抱いたのと同じように、この人にもプラスの印象を持ってもらいたい。

 なんて考えてしまった自分の残念さに呆れる。もちろん、顔には出さない。

「普段はこんなヒールを履かないもので……。慣れないおしゃれはするものじゃないですね」

 控えめに言うと、男性は私に手を差し出しながら笑った。

「それはもったいない。きれいなのに」

(え……)

 きれい、という単語がどこにかかるのか一瞬考えてしまった。

(私? いや、でもそんな)

 ぽかんとしていると、彼は差し出した手をそのままに、困った顔で微笑んだ。

「手、必要なかったですか?」

「あ、す、すみません。お借りします」
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