仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
「すみません。もっとゆっくりお礼を言えたらよかったんですが、これから約束があるので失礼いたします」

「ああ、そうなんですね。それでは」

(本当に名残り惜しいけど……)

 改めてエレベーターへ向かいながら、もう一度だけ男性を振り返る。

 こちらを見ていた本人と目が合った。私を見てにっこり笑った上、軽く手まで振ってくれる。
(手を振るだけで絵になる人、初めて見た)

 これでお別れになってしまうなんて、運命とは残酷なものだ。


 ――と思ったのに、そうはならなかった。

「さっき下でお会いしましたよね。改めて、皆崎和孝です。先日は両親がお世話になったようでありがとうございました」

(う……嘘でしょ……!)

 どんな奇跡か、例のイケメンは私が会う予定だった皆崎さんの息子だった。
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