仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
(本を読んでいるときの横顔でしょ? ページをめくるときの長い指でしょ? 私の視線に気付いて「ん?」って言うときの声も好きだな。夕飯を用意したら必ず食べてくれるところも、おいしいって褒めてくれるところも、片付けは私にやらせずにいてくれるところも好き。……だけどそういう優しさは『妻』じゃなかったら見せてもらえない気がする)

 胸が少し痛んだ。

 和孝さんは優しい。だけどその優しさはきっと『妻』に対してのものであって、『私』へのものではないと感じている。妻としての振る舞いを見せているとき以外に与えられないものだからだろう。

「特別扱いしてほしいんだろうな、私……」

「ふうん?」

 考えるだけで憂鬱になってしまう。
< 54 / 394 >

この作品をシェア

pagetop