仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
「和孝さんは優しいけど、それは私だけのものじゃない。……私だけのものがないの、なにも」

(『特別』をもらえないような妻が愛されていると思う? そんな状態なのに恋愛から始まった結婚だと思える? ……私は無理だった)

 自分でも重症なのはわかっていた。

 一目惚れした相手と結婚できたのに、肝心の相手の気持ちがわからない。

 先に自分の性格を隠して線を引いたのは私かもしれないけれど、和孝さんもまた私と距離を取っている。

「泥沼じゃん、あんたの悩み」

「そうなんだよ。どうしたらいい?」

「向こうから動いてもらうことを考えないで、あんたが頑張ってみたら?」

「あー……」

 空になったアイスティーのグラスを手でつつく。意味もなくストローで氷をかき混ぜた。

「まず、いい子ちゃんの自分を演じるのはやめる」
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