仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 勇気を振り絞ったからこそ、落胆が大きかった。向き合っている和孝さんの顔を見ることができない。

(もっと早くアンティーク市の情報を知っていたら、予定が入る前に誘えたかもしれないのに……)

「でも、あれだな。ひとりで行くことになるんだろ」

「そうだね。だけど危ない場所じゃないから」

「……どこへ行くつもりか聞いてもいい?」

(また気遣ってくれてる)

 妻が休日に出掛ける先を気にするのは、夫として当然だろう。

 それをわざわざ「聞いてもいいか」とワンクッション挟んでくれることをうれしく思う気持ちはある。

 けれど、それが逆に和孝さんとの線を強調させるようでもあった。

「ええと……都内でアンティーク市っていうのがあって」

「え?」
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