寄り添って、そっと手を繋ごう
「でさー、」
「っ!」
やばい。来た。みんなの話し声とパタパタといくつかの足音が聞こえる。逃げなきゃ。
目の前の宏人先輩をとりあえずその場に置いていくことを選んで、私は階段を駆けあがる。
ここは2階。
私たちの教室は3階。
行くべきは4階へ向かう途中まで。なるべく音を立てないように、私は一気に階段をのぼった。
宏人先輩の手には私のシューズがある。私と居たことがバレてないことを願うしかない。
3階と4階の間の踊り場で壁に背中を預ける。
運動神経が悪くなくて良かったとつくづく思う。
さっきの会話を思い出すと、心臓がイヤな音をたてた。
“辛くないの?”
辛くないわけがない。
でも、周りに心配をされることがもっと辛く、惨めだ。
道端で転んだ子供は、親の心配そうな顔を見てから泣き出す。親の視線がなければ、意外と泣かないものだ。
自分が、痛い状況にあること、泣くべき状況にあることを、自覚しなければ、涙は抑えられる。