月に魔法をかけられて
「あのさ、聡が話してたこと覚えてる?」

「聡さんが話していたこと?」

首を傾げて副社長に聞き返す。

「そう」

「あっ、副社長が聡さんを何度も海外に呼びつけてたって話ですか?」

「そうじゃない。それに俺は呼びつけてはいない。ビジネスで呼んだだけだ」

「す、すみません……。えっと、聡さんと高校の時に友達になった話ですか?」

「それも違う」

「えっ? あと何かありましたっけ? あっ! 副社長のせいで聡さんに彼女ができなかったって話ですか?」

「違う」

「聡さんのお話ってそのくらいしか覚えていません。あとは彩矢のことを気に入ってたってことぐらいしか……」

聡さんと会ったときの話を思い出そうとするけれど、何度考えてもそれ以外思い浮かばない。

「あっ、そうだ! 副社長がバーで寝てしまったとき、副社長のことすごく褒めてましたよ。副社長の海外での仕事ぶりはすごかったって。だから副社長は副社長の力でトップになれる人間だって……」

「へぇ、聡がそんなことを言ってたんだ」

「はい。仕事で忙しくて大変だと思うから、副社長のことをきちんとサポートしてほしいって頼まれました」

私は副社長の顔を見て笑顔で頷いた。
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