月に魔法をかけられて
それからの私はひと口という約束を取りつけたものの、結局たくさんお酒を飲む羽目になってしまった。

とにかく副社長は私が気を抜いた頃に何気ない質問をしてきて、必ず私に『副社長』と呼ばせるよう仕向けるのだ。

「美月、こっちが俺の皿? いや、こっちが美月の皿だよな?」

「そっちが副社長のお皿です」

「美月、デザートはどれがいい? 先に決めていいよ」

「私は……ブリュレも美味しそうだけど、アフォガードも捨てがたいな。うーん……やっぱりブリュレにしよっと。副社長は何にされますか?」

やっぱり副社長は意地悪な策士だったわけで、それは私が思っていた以上の相当頭のいい意地悪な策士だった。

私が『副社長』と口走るごとに意地悪な顔をして嬉しそうに私にグラスを向ける。食事が終わるころには、すっかりふわふわのいい気分になった私がいた。
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