月に魔法をかけられて
「腹いっぱいになったな。そろそろ帰るか」

テーブルの上の料理もお酒もほぼなくなり、おまけにデザートまでしっかりと食べた私は、ほろ酔い気分で椅子から立ち上がった。その瞬間、突然視界がグランと揺れる。

座っていた時にはほろ酔いぐらいにしか思ってなかったけど、身体中にかなり酔いが回っているようだ。こけないようにテーブルに手を付きながら足にギュッと力を入れて立つ。力を抜いてしまうと、その場に崩れてしまいそうだ。

副社長はスタッフから渡されたスーツの上着を受け取ると、何も言わず当然のように私の肩にふわりとかけた。
そして優しく私の頭に触れて微笑むと「じゃあ行くか」と言って歩き始めた。

私は足元がふらついてしまわないように細心の注意を払いながら、副社長と一緒にスタッフにお礼を言い、お店をあとにした。お店の外に出ると、そこにはタクシーが一台停まっていた
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