月に魔法をかけられて
「なんだかすみません。プライベートの時間なのにお邪魔してしまって……」

私たちと一緒に席に座ったその男性は、とても申し訳なさそうに彩矢と私に謝ってきた。

「全然気にしないでください。ねっ、美月」

彩矢が受付嬢らしく極上の美しい笑顔で微笑む。

「はい。全然大丈夫ですよ」

私も男性が気にしないように笑顔を向けた。

「はじめまして。石川(いしかわ)(さとし)です」

「はじめまして。山内(やまうち)美月(みづき)と申します」

私たちが挨拶を終えると、彩矢がその場を取り持つように口を開いた。

「石川さん、美月は私の大学の時の友達なんです。美月、石川さんはうちの会社の顧問弁護士の息子さんで、石川さん自身も弁護士さんなの。イケメン弁護士さんだからうちの会社の女の子からとっても人気があってね…。こんなとこでお会いするなんて思ってなかったからすごくびっくりしちゃった……」

「田辺さん、イケメン弁護士だなんてやめてください。恥ずかしいです。もうそろそろおじさんの域に入ってきましたからね」

石川さんは少し照れ気味に微笑みながら、運ばれてきたビールのグラスを手に持ち、口につけた。

きりっとした眉に、大きな黒い瞳が印象的の端正な顔立ち。短めの黒い髪には少しパーマがかかっている。
爽やかな笑顔のうえ、高身長だし、石川さんが女性に人気があるのもわかる気がした。
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